1998年アメリカ公開映画『Hell’s Kitchen』の紹介とネタバレです。日本未公開で情報の少ない本作ですが、中古DVDをゲット。ガン見してこれを書いています♪
以下、アンジェリーナ・ジョリーについては敬称なしの「アンジー」と書きます。
目次
『Hell’s Kitchen』の概要情報
最初「作品の概要情報」を記してから、「作品のネタバレ」を書きます。ネタバレを見たくない!という方は、「作品のネタバレ」の前でブラウザを閉じてくださいね♪
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作品概要
- 原 題:Hell’s Kitchen
- 監 督:トニー・シンシリピーニ
- 脚 本:トニー・シンシリピーニ
- 製 作:トニー・シンシリピーニほか
- 製作総指揮:コンスタンティン・バリス
- 主 演:ロザンナ・アークエット
- 共 演:メキー・ファイファー、アンジェリーナ・ジョリー、ウィリアム・フォーサイスほか
- 公 開 日:1998年(アメリカ)
- 上映の時間:102分
- 興行収入 :不明
- 見放題情報:なし(記事公開日現在)
- そ の 他:日本未公開
あらすじ
英語版ですが、映画『Hell’s Kitchen』のトレーラーはこちらです。
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舞台は1990年代はじめのニューヨーク、マンハッタン区の一角、「ヘルズキッチン」(地獄の厨房)と呼ばれていた治安の悪い荒んだ地域での物語。
5人の若者が夕刻強盗を実行。実行犯は3人。ヘイデン、パティ、ジョニー。唯一の女性でヘイデンの姉グロリア(アンジェリーナ・ジョリー)と、ジョニーの弟でまだ幼いスティービーは車のなかで待っています。
3人が強盗に押し入った店では銃撃戦となります。彼ら3人は相手を倒したものの、パティが誤射でヘイデンを撃ち殺してしまいます。ジョニー(メキー・ファイファー)は死んだヘイデンを抱きかかえて動こうとしません。そして、パティ1人が盗みを果たして店を出て、車に戻ります。
ヘイデンとジョニーが戻らない車内は混乱。パティが「ジョニーが過ってヘイデンを撃ち殺した」と言い放ち、車を出します。そして…。
『Hell’s Kitchen』の見どころ
繰り返しになりますが、この映画『Hell’s Kitchen』のタイトルになっている「ヘルズ・キッチン」とはかつて「アメリカ大陸で最も危険な地域」という意味で「地獄の厨房」と呼ばれていた地域、ニューヨーク州マンハッタン区の一角です。
現在では様変わり。素敵なバーやレストランも多く、多くの人々に人気があるため家賃も高騰している地域に大変身しています。
そんな「かつて治安の悪かった地獄の厨房を抜け出すことができない人たち」にスポットをあてた物語なのですが…。
サイト管理人「シネマファン♪」(以下、「私」と記します)は、この映画『Hell’s Kitchen』を2度観ましたが、誰が主人公なのかよくわかりません。
ネットなどでいろいろ調べるとロザンナ・アークエット演ずる「リズ」が主人公と書いてあるものが散見されます。なのでこの記事でも一応それを採用しました。しかし通しで2度見ても本当にそうなのかな…と首をかしげてしまうのです。
主人公がわかりにくいということは「映画の主張の軸が見えにくい」と言い換えることができます。
そこで、無理矢理、主張=主題を感じとってみました。
治安が悪く、親も親戚も仲間たちもみんな貧困だらけの街に生まれ育った子供は悪に染まる…そんな環境のなかでも、立ち直ることができるという「プチ・アメリカンドリーム」が主題なのかもしれません。
そういう視点で見ると、たしかにラストに生き残っている(?)登場人物たちは、当初よりは「かなりまとも」に成長しているのです。それでも「映画の主張の軸が見えにくい」のは主役の軸をしっかり固定していないからでしょう。
ということは…
誰を「軸」にして物語を見るのかによって視聴後の感想は変わってくるかもしれないということです。「良く表現すると」、視点の数だけ楽しめる作品なのかもしれません。
「軸」候補になる登場人物は、次の4人です。以下、少しネタバレを含みますありますのでご注意ください。
- リズ(ロザンヌ・アークエット)(主人公っぽい!?)
- グロリア&強盗時に死んだヘイデンの母。
- 昔は舞台女優だったが今は場末のバーで歌って日銭を稼いでいます。
- ヘルズ・キッチンの退廃を象徴するような女性で、ドラッグ&SEX漬け。
- 娘グロリアの恋人にも手を出し、グロリアから見放されています。
- そんなリズも後半では、なんとか立ち直ろうと…。
- グロリア(アンジェリーナ・ジョリー)
- リズの娘&強盗時に死んだヘイデンの姉。
- 強盗の実行犯パティからは「弟ヘイデンを撃ち殺したのはジョニーだ」と聞かされています。
- そんなこともありヘイデンを誤射し殺したパティと恋仲。
- 5年間の刑期を終えて出てきたジョニーを弟の仇として殺そうとしています。
- パティ(ウィリアム・フォーサイス)
- リズに次ぐ、退廃の象徴のような人物。
- ヘイデン、パティ、ジョニーの3人で実行した強盗で、過って仲間のヘイデンを撃ち殺し、1人逃げ帰りました。
- ただし、グロリアには弟ヘイデンを殺したのはジョニーだと言ってあります。
- その後、ドラッグディーラーとなり、ヘイデンの姉グロリアとは恋仲になりました。
- あるときからグロリアの母リズにも手を出し関係を持ち続けます。
- そしてジョニーを慕う子供を撃ち、精神病院に入院させられます。
- ジョニー(メキー・ファイファー)
- ヘイデン、パティ、ジョニーの3人で実行した強盗で、パティが誤射して殺してしまったヘイデンを抱きかかえその場から動かず。そのまま警察に捕まり実刑判決。刑務所に収監されます。
- 5年の刑期を終え出所。「ジョニーがヘイデンを殺した」と信じさせられているヘイデンの姉グロリアから命を狙われています。
- 5年の刑務所暮らしのなかではじめたボクシング。出所後、本格的に練習を始め、プロデビュー。そしてミドル級のチャンピョンになります。
- やがてグロリアの誤解が解け、グロリアと恋仲になり、グロリア妊娠&結婚
『Hell’s Kitchen』アンジーの関わりなど
アンジーが映画『Hell’s Kitchen』を撮影していたとき、アンジーはもうひとつの映画『ジョージ・ウォレス/アラバマの反逆者』を同時並行で撮影していました。
前者の役柄がドラッグとセックスまみれの退廃的な生活を送るダメダメ人間、後者は政治家でトップ(大統領)を目指す男の妻役。全く違う役の並行撮影はストレスもあったのでしょうか…。
アンジー伝記『暴かれた秘密』によれば、このころのアンジーは実生活でもドラッグまみれだったようです。ドラックを手に入れるためにドラッグ売人のところを訪れる様子などが描かれています。
つまり、22歳の頃のアンジーは実際に映画『Hell’s Kitchen』のグロリアのような状態だったのかもしれません。ただし『暴かれた秘密』に登場するドラッグ売人はこう証言しています。
「彼女は全く買わないか、思いっきりやるか、どちらかだった」と彼は振りかえった。「それに深刻なヤク中ではなかった。百ドル以上、買うことはなかったからね。」
そして、アンジーは撮影で奇行が目立ってきたといいます。それはグロリアの演技だったのか、それとも「地」だったのか、微妙なところです。
要するに映画『Hell’s Kitchen』を撮影していたころは、アンジーの人生は「廃退へまっしぐら」という危機的状態にあったと言えるのかもしれません。それが『Hell’s Kitchen』のグロリア役を演じる上で役にたったのかどうかはわかりません。
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『Hell’s Kitchen』のネタバレ
以下「ネタバレ」です。さきほどの登場人物紹介でも多少のネタバレを書きましたが、今度は本格的な「ネタバレ」です。なので「ネタバレ」は読みたくないという方は、ここでブラウザを閉じてください。
起〜強盗でグロリアの弟死亡&ジョニーの弟失踪
1990年前半、地球上で最も危険な地域と言われていたニューヨーク州マンハッタンの一角「Hell’s Kitchen」。そこで暮らす5人の若者たちがある晩、強盗を実行します。車で乗り付けグロリア(アンジェリーナ・ジョリー)とスティーピー(ジョニーの弟)を車に残し、3人、ヘイデン、パティ(ウィリアム・フォーサイス)、ジョニー(メキー・ファイファー)が強盗を実行します。
押し入った店の者と撃ち合いになり、慌てたパティがヘイデンを誤射し撃ち殺してしまいます。ジョニーは死んだヘイデンを抱えその場を動こうとしません。店の者を撃ち殺したパティは物を盗み、パティとジョニーを残し店をでます。
戻ってきたのがパティ1人なので、社内のグロリアとスティーピーはパニックです。そんな2人にお構いなしにパティは車を発車させ3人で逃げます。
事件の末路は描かれていませんが、パティは無罪放免(?)。ジョニーは逮捕され実刑が下り、刑務所に収監されます。
刑務所に収監中、ジョニーの母親はなくなり、そして弟スティーピーは失踪、居所がわかりません。
パティから「弟ヘイデンを撃ち殺したのはジョニーだ」と聞かされていたグロリアは真実を知らぬままパティと恋仲になります。
承〜グロリアの宿敵ジョニーの出所
事件から5年経って、ジョニーが刑期を終え出所してきました。ジョニーの出所を知ったグロリアは「弟ヘイデンを殺したジョニーを殺そう」と決意しています。
一方、ジョニーは出所後の住まいと働き場所として厩舎にお世話になります。ジョニーは厩舎のボスがボクシングの元チャンピョンであったことを知ります。
実は、ジョニーは刑務所でボクシングをはじめ、連戦連勝の強さでボクシングに傾倒しはじめていたのです。ジョニーは最初は固辞していたボスに無理矢理教えを請い、トレーニングを受けることになりました。
この頃、ジョニーは盗みを働く10歳くらいの少年の更生に手を貸し、その少年はジョニーを慕ってジョニーの側にいつくようになります。ジョニーがその少年の面倒を見るのは、失踪している弟スティービーが気になるからに他なりません。
さて、ジョニーのボクシング生活ですが、街の怪しいプロモーターが関わり、ジョニーはプロデビュー。ジョニー自身のセンスと努力もあり、彼はミドル級のチャンピョンになってしまうのです。
転〜リズの退廃の日々とジョニーの転身
一方、映画冒頭から出ているグロリアの母リズ(ロザンナ・アークエット)。この映画が1990年代の「ヘルズ・キッチン」地域の退廃を描いているとしたら、まさしくリズこそ主人公です。
一時期は舞台俳優として活躍するものの彼女の人生は転落状態。いまは場末のバーで歌手として日銭を稼いでいます。ドラッグ&セックスまみれの生活です。5年前には息子ヘイデンを亡くし、そして、娘グロリアからも見放されています。
そんな退廃の極みを行くようなリズは、とうとう娘の恋人パティにも手を出してしまいます。完全に亀裂が入った母と娘グロリア。
ところでグロリアは弟の仇ジョニーを殺すために銃を入手。それを手にジョニーの前に現れ、いままさに引き金を引くだけ…。しかし、最後の最後、引き金を引くことができず、グロリアは泣き崩れます。
結〜誤解が解けジョニーとグロリアが…
その後、パティ自身から直接「ヘイデンを殺したのは実は俺だ」と告白されたグロリア。誤解が解けたグロリアとジョニーは恋仲に。そして、グロリア妊娠、結婚するに至ります。
そんな幸せなグロリア、ジョニー&ジョニーの子分のような少年の前は、ジョニーの弟スティービーの捜索をはじめます。しかし、すでに彼が死亡していたことを知ることになります。
それからほどなく、混乱したパティが銃を持って3人の前に登場。なんとこれまでの自分を悔いて彼らの前で拳銃自殺しようとするのです。
それを止めに入ったジョニー。しかし、銃が発射され少年を打ち抜いてしまいます。
場面変わって、グロリアの母リズが、とあるところでスピーチをしています。どうやらリズはドラッグを手放したようです。
さらにシーンが変わって精神病院。少年を撃ってしまったパティは精神病院に隔離されています。そこで詩などを書いて悔い改める日々を送るパティ。
そんなパティのところにジョニーが登場。2人はしっかりハグ。
さらにさらに場面が変わり、グロリア、ジョニー、少年の3人がいる厩舎にグロリアの母リズが登場。長年の確執もなくなり、グロリアとリズがハグ。
で、めでたし、めでたし。
まとめ
この記事では映画『Hell’s Kitchen』の紹介と「ネタバレ」を書きました。
ネットでこの作品の評価をみると「ボロクソ」なものが多いです。そのサマリを書くと大半の批判が「何を主張したいのか全くわからない」というものです。
主張がわかりにういいことについては前記しました。私なりの解釈では、本作『Hell’s Kitchen』の主張は「退廃からの脱出」です。もう少し言葉を添えると「退廃からの脱出は本人しだいだ」ということです。
また、誰を軸に物語を見るかによって、感じる面白さは変わってくるかもしれないということも書かせていただきました。
とくに、お薦めする視点はアンジー演ずるグロリアに注目して見ていただくことです。退廃から見事脱出したグロリア。そして、グロリアを演じるアンジー自身も映画『Hell’s Kitchen』撮影時は退廃の渦中にいて、公開から3年余りで「現実的な退廃から脱出」を果たしているからです。
是非、レンタルで映画『Hell’s Kitchen』のDVDを見つけて視聴していただければと思います♪
*アイキャッチ画像の出典:pixabay
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いつもお読みいただきありがとうございます。
シネマファン♪